柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)とは?小柴胡湯・桂枝湯との違いをご紹介

お腹の痛みと、かぜのようなだるさが同時に続いている。そんなとき病院で「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」を処方されたり、薬局で名前を見かけたりして、どんな漢方薬なのか気になった方に向けた内容です。

柴胡桂枝湯は、「小柴胡湯(しょうさいことう)」と「桂枝湯(けいしとう)」という2つの漢方処方を合わせてつくられた薬です。体力が中等度またはやや虚弱な人で、腹痛を伴いながら微熱・寒気・頭痛・吐き気などが続くときの、かぜの中期から後期の症状や胃腸炎に用いられるとされています。構成処方の一つである小柴胡湯については、当院の小柴胡湯に関する記事でも詳しく紹介しています。

この記事では、柴胡桂枝湯の成り立ちや構成生薬、一般用医薬品としての効能・効果の目安、小柴胡湯・桂枝湯との違い、用法用量の考え方、副作用や注意点、医療用医薬品と一般用医薬品(OTC)の違い、購入方法までを整理しました。実際に服用を検討する際は、必ずお手元の製品の添付文書を確認し、不明な点は医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。なお当院は鍼灸院であり、漢方薬の調剤・処方・販売は行っておりません。本記事は一般的な医薬品情報の紹介を目的とした情報提供であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。

柴胡桂枝湯とは

柴胡桂枝湯は、体力中等度またはやや虚弱な人を対象に、腹痛を伴うことが多く、ときに微熱・寒気・頭痛・吐き気などがみられる、かぜの中期から後期の症状や胃腸炎に用いられるとされる漢方処方です。読み方は「さいこけいしとう」で、名前の由来は構成生薬の柴胡(さいこ)と桂枝(けいし、桂皮)から来ています。

かぜの引き始めの症状というより、発症から数日経って、熱の上がり下がりを繰り返しながら胃腸の不調が前面に出てきた段階を想定してつくられた処方です。一般用医薬品としては第2類医薬品に分類されている製品が多く、ドラッグストアでも購入できます。ただし、実際の分類や効能・効果の文言は製品によって細部が異なるため、必ずパッケージの添付文書で確認するようにしてください。

柴胡桂枝湯の成り立ち:小柴胡湯と桂枝湯を合わせた処方

柴胡桂枝湯は、名前が示す通り「小柴胡湯」と「桂枝湯」という2つの古典的な漢方処方を組み合わせてつくられたとされる処方です。それぞれの処方が持つ働きを合わせることで、単独の処方ではカバーしにくい状態に対応する狙いがあると考えられています。

小柴胡湯が担うとされる役割

小柴胡湯は、かぜが長引いて胸脇苦満(きょうきょうくまん・わき腹から胸にかけての張った感じ)や微熱の繰り返し、食欲不振などがみられる状態に用いられるとされる処方です。柴胡桂枝湯には、この小柴胡湯の構成生薬の多くが含まれています。

桂枝湯が担うとされる役割

桂枝湯は、かぜのひき始めで体力があまりない人の、寒気や発熱、頭痛などの表証(体の表面に現れる症状)に用いられるとされる処方です。柴胡桂枝湯では、この桂枝湯の生薬構成が加わることで、寒気や頭痛といった症状への対応が意図されているとされています。

2つの処方を合わせることで、かぜの中期から後期にかけて起こりやすい「胃腸の不調」と「かぜらしい表面的な症状」の両方が重なった状態を想定した処方設計になっている、という考え方が一般的です。

柴胡桂枝湯の構成生薬とそれぞれの役割

一般用医薬品として販売されている柴胡桂枝湯エキス製剤には、おおむね次のような生薬が配合されています(配合量は製品によって異なります)。

・柴胡(さいこ)      熱や炎症に関わる症状に対応するとされる中心的な生薬
・黄芩(おうごん)     柴胡と組み合わせて用いられることが多い生薬
・半夏(はんげ)      吐き気やみぞおちのつかえ感に関連するとされる生薬
・人参(にんじん)     胃腸の働きや全身の消耗に関連するとされる生薬
・桂皮(けいひ・桂枝)   発汗や体表の症状に関連するとされる生薬
・芍薬(しゃくやく)    筋肉のこわばりや腹痛に関連するとされる生薬
・大棗(たいそう)     他の生薬の働きを助けるとされる生薬
・生姜(しょうきょう)   胃腸を温める働きに関連するとされる生薬
・甘草(かんぞう)     全体の調和や緩和作用に関連するとされる生薬

これらの生薬が一定の比率で配合され、エキス化されたものが製品として流通しています。生薬ごとの配合量や添加物は製品によって異なるため、詳細は各製品の添付文書に記載された成分・分量の欄で確認してください。

なお、上記は伝統的な漢方理論における各生薬の一般的な位置づけを紹介したものであり、個々の成分単体としての医薬品的な効能・効果を保証するものではありません。

柴胡桂枝湯の効能・効果(一般用医薬品としての目安)

一般用漢方製剤としての柴胡桂枝湯は、「体力中等度またはやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・吐き気などのあるものの次の諸症:胃腸炎、腹痛を伴う感冒(かぜ)の中期から後期の症状」に用いられるとされています(製品ごとに記載は異なる場合があるため、実際の使用にあたっては添付文書をご確認ください)。ポイントは次の2つです。

・体力が「中等度」または「やや虚弱」な人を対象としている(体力が充実している人や、逆にかなり衰弱している人向けの表現ではありません)
・かぜの「引き始め」というより「中期から後期」、つまり発熱や寒気を繰り返しながら胃腸症状が出てきた段階を想定している

「効く」「治る」といった断定的な言い方ではなく、あくまで「このような症状の目安に用いられるとされている」という位置づけで理解しておくことが大切です。実際の効能・効果の文言は製品ごとに細部の表現が異なる場合があるため、購入・服用の際は必ずお手元の製品の添付文書を確認してください。当院は鍼灸院であり、柴胡桂枝湯を含む漢方薬の調剤・処方・販売は行っておりません。

小柴胡湯・桂枝湯との違い・使い分けの考え方

「かぜっぽいけれど、柴胡桂枝湯・小柴胡湯・桂枝湯のどれが合うのか分からない」という疑問はよく聞かれます。あくまで一般的な考え方の整理として、次のような目安が挙げられることが多いです。桂枝湯そのものの詳しい解説は当院の桂枝湯に関する記事でも紹介しています。

桂枝湯との違い

桂枝湯は、かぜの「引き始め」で体力があまりない人の、寒気や発熱、頭痛などが中心の状態に用いられるとされています。腹痛や胃腸症状が前面に出ていない段階を想定した処方です。一方の柴胡桂枝湯は、腹痛や胃腸炎症状を伴う点が大きな違いとされています。

小柴胡湯との違い

小柴胡湯は、かぜが長引いて胸脇苦満や微熱の繰り返しが中心の状態に用いられるとされています。柴胡桂枝湯は、この小柴胡湯的な症状に加えて、桂枝湯的な寒気・頭痛といった表証も重なっている場合に用いられるとされる点が違いです。小柴胡湯の効能・効果や間質性肺炎などの副作用については、当院の小柴胡湯に関する記事でより詳しく整理しています。

このように、どの処方が合うかは体力や症状の組み合わせによって考え方が分かれます。自己判断だけで選ぶのではなく、症状が続く場合や判断に迷う場合は、医師・薬剤師・登録販売者に相談したうえで選ぶことをおすすめします。

用法・用量の一般的な考え方

一般用医薬品の柴胡桂枝湯エキス製剤は、成人(15歳以上)を基準に、1日2〜3回、食前または食間に水または白湯で服用するという用法が多く採用されています。小児については年齢に応じて用量が調整され、2〜4歳未満は服用できないとされている製品もあります。

ただし、1日の服用回数(2回か3回か)や、何歳から服用できるかといった具体的な数値は製品によって異なります。パッケージや添付文書に記載された用法・用量を必ず確認し、そこに書かれた内容を優先してください。この記事の記載は、あくまで一般的な傾向を示すものであり、個別の製品の正確な用法・用量を保証するものではありません。

副作用・注意点

漢方薬は「体に優しい」というイメージを持たれがちですが、医薬品である以上、副作用や注意すべき点があります。過度に不安になる必要はありませんが、次のような点は知っておくとよいでしょう。

一般的な副作用として報告されているもの

添付文書上は、発疹・発赤、かゆみといった皮膚症状のほか、まれに間質性肺炎、肝機能障害、筋肉障害(ミオパチー)などが起こる可能性があるとされています。服用中に息切れ、空咳、発熱が続く、体がだるい、尿の色が濃くなる、手足に力が入りにくいといった症状が現れた場合は、服用を中止し、速やかに医師・薬剤師に相談することが推奨されています。

甘草(グリチルリチン酸)と偽アルドステロン症

柴胡桂枝湯には甘草が含まれています。甘草に含まれるグリチルリチン酸は、他の漢方薬や医薬品と重複して長期間・大量に摂取した場合、むくみ、血圧上昇、手足のだるさ、しびれ、こわばりなどを伴う偽アルドステロン症という状態を起こすことがあるとされています。複数の漢方薬や医薬品を併用する場合は、甘草の重複摂取に注意し、事前に薬剤師などに相談することをおすすめします。

柴胡・黄芩を含む処方に関する注意

柴胡や黄芩を含む漢方処方については、インターフェロン製剤との併用に関する注意喚起がなされてきた経緯があり、間質性肺炎などの重篤な副作用が一般的な注意点として挙げられることがあります。柴胡桂枝湯の構成処方の一つである小柴胡湯は、インターフェロン製剤投与中の患者への使用が禁忌とされ、医療用漢方エキス製剤の中でも添付文書に「警告」欄が設けられている処方です(詳細は小柴胡湯に関する記事を参照)。なお、柴胡桂枝湯自体の添付文書には、小柴胡湯のような「インターフェロン製剤投与中の患者への使用禁忌」や「警告」欄の記載はなく、間質性肺炎は他の重大な副作用と同様に一般的な注意事項として位置づけられています。持病がある方、他の薬を服用中の方、妊娠中・授乳中の方、高齢の方は、服用前に医師・薬剤師に相談することが推奨されています。

いずれの情報も、服用を過度に不安視させるためのものではなく、安全に使用するための一般的な留意点として押さえておくとよいものです。個別の製品における正確な副作用・注意事項の記載は、必ずその製品の添付文書で確認してください。医薬品の副作用に関する公的な安全性情報は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療用医薬品の添付文書等検索一般用医薬品(OTC)の添付文書等検索でも確認できます。

医療用医薬品と一般用医薬品(OTC)の違い

柴胡桂枝湯には、医療機関で医師が処方する「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどで購入できる「一般用医薬品(OTC)」の2種類が存在します。同じ「柴胡桂枝湯」という名前でも、承認されている効能・効果の表現や用法・用量、対象年齢などは異なる場合があるため、混同しないことが大切です。

医療用医薬品は、医師の診断のもとで、個々の患者の状態に応じて処方されるものです。一方、一般用医薬品は、購入者自身の判断で使用することを前提に、比較的軽度な症状を対象とした効能・効果が承認されています。

「病院で処方された柴胡桂枝湯」と「薬局で買った柴胡桂枝湯」は、同じ処方名であっても細部の記載が異なることがある、という点は覚えておくとよいでしょう。

すでに医療機関で柴胡桂枝湯を処方されている場合、市販の同処方を自己判断で追加購入・併用することは、生薬成分が重複し副作用リスクが高まる可能性があるため、避けたほうがよいとされています。必ず処方医・薬剤師に相談してください。

購入方法・入手経路

一般用医薬品の柴胡桂枝湯エキス製剤は、ドラッグストアや薬局、一部のオンラインドラッグストアで購入できます。多くの製品が第2類医薬品に分類されており、薬剤師の対面説明が必須ではないものの、登録販売者が常駐する店舗であれば購入時に相談することが可能です。当院は鍼灸院であり、柴胡桂枝湯の販売・処方は行っておりません。

購入の際は、次の点を確認しておくと安心です。

・自分の体力・症状のタイプが、パッケージに記載された効能・効果の目安に近いかどうか
・現在服用中の他の漢方薬・医薬品に甘草(グリチルリチン酸)などの重複する成分が含まれていないか
・妊娠中・授乳中、高齢者、持病がある場合は事前に薬剤師・登録販売者に相談したか

医療機関で処方を受けたい場合は、内科や漢方外来を掲げるクリニックなどで相談することもできます。保険診療の対象となるかどうかは医療機関・診断内容によって異なるため、受診先に確認するとよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 柴胡桂枝湯はどんな症状のときに使われますか?

体力が中等度またはやや虚弱な人で、腹痛を伴いながら微熱・寒気・頭痛・吐き気などがみられる、かぜの中期から後期の症状や胃腸炎に用いられるとされています。かぜの引き始めというより、数日経って胃腸の不調が出てきた段階を想定した処方です。実際に当てはまるかどうかは、医師・薬剤師・登録販売者に相談することをおすすめします。

Q2. 柴胡桂枝湯と小柴胡湯はどちらを選べばよいですか?

一般的には、胸脇苦満や微熱の繰り返しが中心であれば小柴胡湯、それに加えて寒気や頭痛など表面的な症状も重なっていれば柴胡桂枝湯が用いられるとされています。ただし体力や症状の組み合わせによって考え方は分かれるため、自己判断だけで選ばず、専門家に相談したうえで選ぶと安心です。

Q3. 柴胡桂枝湯はどのくらいの期間飲み続けてよいですか?

一般用医薬品の場合、数日間服用しても症状の改善がみられない場合は、服用を中止し医師・薬剤師・登録販売者に相談することが推奨されています。具体的な服用期間の目安は製品の添付文書に記載されているため、必ず確認してください。

Q4. 柴胡桂枝湯に副作用はありますか?

発疹やかゆみといった皮膚症状のほか、まれに間質性肺炎、肝機能障害、筋肉障害などが報告されています。また甘草の重複摂取により偽アルドステロン症が起こることがあるとされています。異常を感じた場合は速やかに服用を中止し、医師・薬剤師に相談してください。

Q5. 妊娠中でも柴胡桂枝湯は飲めますか?

妊娠中・授乳中の使用については、事前に医師・薬剤師に相談することが推奨されている製品が多くあります。自己判断での服用は避け、必ず専門家に相談してください。

Q6. 柴胡桂枝湯は市販薬と病院の処方薬で違いがありますか?

同じ「柴胡桂枝湯」という名前でも、医療用医薬品と一般用医薬品(OTC)では承認されている効能・効果の表現や用法・用量が異なる場合があります。すでに医療機関で処方されている場合は、市販薬を自己判断で追加購入・併用せず、処方医・薬剤師に相談してください。

まとめ

あらためて、当院は鍼灸院であり、本記事で紹介した柴胡桂枝湯をはじめとする漢方薬の調剤・処方・販売は行っておりません。柴胡桂枝湯は、小柴胡湯と桂枝湯という2つの漢方処方を合わせてつくられたとされる処方で、体力中等度またはやや虚弱な人の、腹痛を伴うかぜの中期から後期の症状や胃腸炎に用いられるとされています。

柴胡・桂皮・芍薬・半夏・黄芩・人参・大棗・生姜・甘草といった生薬から構成され、それぞれが体を温めたり、炎症や胃腸の不調に関わるとされる役割を担っているとされています。

一方で、甘草によるグリチルリチン酸の重複摂取や、柴胡・黄芩を含む処方特有の注意点など、知っておきたいポイントも存在します。医療用医薬品と一般用医薬品では承認内容が異なる場合があるため、混同しないことも大切です。

効能・効果、用法・用量、副作用の詳細は、必ずお手元の製品の添付文書で確認し、不安な点や症状が続く場合は医師・薬剤師・登録販売者に相談したうえで、ご自身の状態に合った使い方を選んでください。気血水・証の基礎理論は当院の漢方薬とは?証・気血水・選び方でもまとめています。

【本コラムの監修】

鍼灸師 飴本文子

ハリニー鍼灸治療院/鍼灸師 飴本文子

国家資格登録番号
はり師 第13878号
きゅう師 第24519号

・当院について
鍼灸治療では、頭の鍼と経絡治療を用いた本格的な鍼灸施術を行います。身体が本来持っている回復力を高め、バランスが崩れた身体が元に戻るためのお手伝いをします。局所の施術だけでなく、触診や視診を重視する伝統的な診察方法で全身の状態を観察し、身体と対話をしながら、日本人の体質に合わせた鍼灸治療を心掛けております。

目次