血の巡りが悪くなり、体のあちこちに「痛み」「しこり」「黒ずみ」が現れる――これが漢方でいう瘀血(おけつ)です。生理痛や肩こり、顔のくすみ、しみが気になる方の多くが、この瘀血という病態にあてはまります。
瘀血への対応のために用いられる漢方薬には、桃仁(とうにん)と牡丹皮(ぼたんぴ)という2つの生薬が繰り返し登場し、これに気の巡りを整える生薬や、血を補う生薬、便通を整える生薬などが組み合わさることで、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、加味逍遙散といった処方が構成されています。本記事では、瘀血という概念の基本から、代表的な生薬の働き、そして4つの処方の違いと使い分けまでを、古典の記載も交えながら整理していきます。なお当院は鍼灸院であり、漢方薬の調剤・処方・販売は行っておりません。本記事は漢方の伝統理論の紹介を目的とした情報提供です。
瘀血とは何か――血の巡りが滞った状態を指す漢方用語
瘀血とは、漢方医学における「気・血・水」という体の構成要素のうち、「血(けつ)」が停滞して十分に巡らなくなった状態を指す言葉です。血そのものが不足している「血虚」とは区別され、血の量自体は足りていても、粘りが強くなったり、局所に滞ったりして流れが悪くなっている状態を意味します。西洋医学の血液検査で異常が出るとは限らず、あくまで漢方的な体質・病態の分類として用いられる概念です。血虚との違いについては、当院の血虚と四物湯に関する記事でも紹介しています。
瘀血が生じる主な要因
瘀血は単独で生じるというより、他の異常と絡み合って生じることが多いとされます。冷えによって血管が収縮し血流が悪くなるケース、月経や出産に伴い骨盤内に血の滞りが生じるケース、ストレスによる気の巡りの停滞(気滞)が血の流れにも波及するケース、加齢によって血管や組織の柔軟性が落ち、巡りが悪化するケースなどが代表例です。デスクワーク中心で体を動かす機会が少ない生活も、瘀血の一因になり得ると考えられています。
気血水の中での瘀血の位置づけ
気血水という枠組みでは、気の異常(気虚・気滞・気逆)、血の異常(血虚・瘀血)、水の異常(水毒)がそれぞれ独立して語られますが、実際の臨床では単独で存在することの方がまれです。瘀血への対応に用いられる漢方薬の構成生薬が比較的多く、複雑に見えるのはこのためです。血の滞りを取り除く生薬だけでなく、気や水の巡りを助ける生薬が同時に配合されることで、初めて瘀血の改善が期待できるという考え方が背景にあります。気血水の基礎理論全体は当院の気・血・水に関する記事でも紹介しています。
瘀血のセルフチェック――「痛む、しこる、黒ずむ」のサイン
瘀血の状態は、体の表面に現れるいくつかのサインから推測できるとされています。代表的なキーワードは「痛む・しこる・黒ずむ」の3つです。
全身に現れやすい症状
- 刺すような、あるいは固定した部位に感じる痛み(頭痛、肩こり、腰痛、生理痛など)
- 顔色のくすみ、しみ、そばかす、クマ
- 唇や歯茎の色が暗紫色っぽい
- 手足の先の冷えとほてりが同居している
- 月経時に経血の塊(レバー状の血塊)が混じりやすい
- 皮膚の乾燥やあかぎれ、静脈瘤が目立つ
これらはあくまで漢方的な体質判断の目安であり、痛みや出血が強い場合、しこりが急に大きくなった場合などは、瘀血のセルフチェックだけで済ませず医療機関の受診を優先することが大切です。
舌診でわかるサイン
漢方の診察では、舌の状態を観察する「舌診」が重視されます。瘀血の傾向がある方の舌は、暗い紫色を帯びていたり、舌の裏側の静脈(舌下静脈)が膨らんで黒っぽく見えたりすることがあるとされます。また、舌の表面に紫色や黒っぽい斑点(瘀点・瘀斑)が見られることもあり、日々の体調変化を観察する簡便な目安として用いられています。
腹診でわかる「瘀血の圧痛点」
漢方の腹診では、お腹を軽く押したときに感じる圧痛の有無や位置も、瘀血を見極める材料になります。江戸時代の医書『腹証奇覧』にも詳しく記されているように、下腹部を指で押した際に特定の場所に痛みや抵抗を感じる所見は「瘀血の圧痛点」と呼ばれ、これがどの処方に近い病態かを判断する手がかりの一つとされています。後述するように、桂枝茯苓丸が向くとされるタイプと大黄牡丹皮湯が向くとされるタイプとでは、この圧痛点の位置に違いがあると言われています。
瘀血への対応の主役、生薬「桃仁」と「牡丹皮」
瘀血を対象とする漢方薬の多くに共通して配合されているのが、桃仁と牡丹皮という2つの生薬です。当院は鍼灸院であり、これらを含む漢方薬の調剤・処方・販売は行っておりません。以下で紹介する各生薬・処方の効能・効果は医薬品としての承認内容や伝統理論の紹介であり、当院がその効果を保証するものではありません。この2つがどのような由来を持ち、どのような働きを期待されているのかを見ていきましょう。
桃仁――桃の種子に由来する駆瘀血生薬
桃仁は、その名の通り桃の種の中にある仁(種子の中身)を用いた生薬です。血の停滞や下腹部の張り・痛みに対して用いられる代表的な生薬の一つとされています。主成分の一つであるアミグダリンは、同じバラ科であるアーモンドにも含まれる成分で、基礎研究レベルで何らかの生理活性が報告されているとされますが、具体的な出典は本記事執筆時点で当院として特定・検証できておらず、仮に何らかの作用が研究段階で示唆されていたとしても、ヒトでの効果を保証するものでは全くありません。またアミグダリンは体内で分解されるとシアン化水素(青酸)を生じ得る青酸配糖体であり、過剰摂取は健康被害につながるおそれがあります。そのため桃仁中の含有量はごく微量に留まるとはいえ、生薬としての使用は医師・薬剤師の管理のもとで用量が調整されるべきものです。桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯といった瘀血対策の処方のほぼすべてに桃仁が配合されている点からも、瘀血への対応における中心的な生薬であることがうかがえます。
牡丹皮――ボタンの根皮に由来する消炎生薬
牡丹皮は、観賞用としても知られるボタンの根の皮を乾燥させた生薬です。血の滞りに対する働きに加えて、体にこもった熱感や炎症を鎮める方向で使われてきました。主成分のペオノールについては、動物や培養細胞を用いた基礎研究レベルで何らかの生理活性が報告されているとされますが、具体的な出典は本記事執筆時点で当院として特定・検証できておらず、本記事では詳細な言及を控えます。仮に何らかの作用が研究段階で示唆されていたとしても、それがヒトでの効果を保証するものではありません。桃仁と牡丹皮は、どちらも「血の滞りを動かす」という共通の方向性を持ちながら、牡丹皮は特に熱感や炎症を伴うタイプの瘀血に用いられやすいという違いがあります。
桂枝茯苓丸――婦人科3大処方の一つ、瘀血への対応の基本形
桂枝茯苓丸は、当帰芍薬散、加味逍遙散と並んで「婦人科3大処方」と呼ばれる漢方薬の一つで、瘀血への対応における基本形ともいえる存在です。
構成生薬とそれぞれの役割
構成生薬は桂皮、芍薬、桃仁、茯苓、牡丹皮の5つです。桂皮は気が上にのぼる「気逆」を鎮める方向で働き、芍薬は血虚を補う方向で、茯苓は水の巡りの滞り(水毒)を整える方向で使われます。そこに桃仁と牡丹皮が加わることで、瘀血に対応する構成になっています。気逆に対応する生薬が含まれているため、頭痛やめまい、のぼせといった頭部の症状を伴うケースにも用いられやすいという特徴があります。
『金匱要略』にみる記載
桂枝茯苓丸は、後漢の時代にまとめられたとされる古典医書『金匱要略』の婦人妊娠病篇に記載があります。原文には「婦人宿(もと)より癥病(ちょうびょう)有り、経断ちて未(いま)だ三月に及ばずして、漏下止まざるを得る」云々とあり、下腹部にしこり(癥病)を抱えた女性の不正性器出血について、そのしこりに滞った古い血(瘀血)を取り除く必要があると説き、その手段として桂枝茯苓丸が示されています。
古典では下腹部のしこりに伴う不正出血への対応として記載されており、現代の婦人科疾患(例:子宮筋腫など)と関連付けて語られることもありますが、これは伝統的な症状記載の対比に過ぎず、桂枝茯苓丸がこれらの疾患を治療する効果を有することを意味するものではありません。こうした症状の診断・治療はあくまで医療機関で受けることが前提です。
婦人科疾患だけでなく更年期のほてりにも
桂枝茯苓丸が用いられる場面は、子宮まわりの器質的な問題に限られません。気逆を鎮める桂皮が含まれることから、更年期に女性ホルモンのバランスが崩れて生じるホットフラッシュ(顔がほてり赤らむ症状)にも用いられることがあります。体力が中程度からしっかりしている方に向くとされ、古くはこの処方が向く体格を「女丈夫」(体格のしっかりした女性)と表現し、当帰芍薬散が向く体格の「当芍美人」(色白で華奢な女性)と対比させて語られてきました。
桃核承気湯――便秘とのぼせ、精神症状を伴う瘀血に
桃核承気湯は、桂枝茯苓丸よりも実証(体力が充実している状態)向けの処方で、便秘の有無が使い分けの大きなポイントになります。
構成生薬にみる2つの側面
構成生薬は桃仁、桂皮、大黄、甘草、芒硝の5つです。桃仁と桂皮が瘀血と気逆に対応し、残る大黄・甘草・芒硝は、便秘に用いられる代表処方「調胃承気湯」と同じ組み合わせです。大黄と芒硝には便通を促す働きがあるとされ、体にこもった熱を排便とともに逃がすという発想が背景にあります。この構成から、便秘傾向があり、のぼせも強いタイプの瘀血に向く処方として位置づけられています。
『傷寒論』にみる「其の人狂の如く」の記載
桃核承気湯は、傷寒論の太陽病篇に記載がある処方です。原文には「太陽病解せず、熱膀胱に結び、其の人狂の如く……但小腹急結する者は、乃(すなわ)ち之を攻(せ)むべし、桃核承気湯に宜(よろ)し」とあります。体表の症状(太陽病)が治りきらないまま、その熱が下腹部に結んで瘀血となり、精神的に落ち着かなくなった状態を指すとされ、左下腹部を押すと索状のしこりと痛みを触れる所見(小腹急結)が使用の目安として示されています。
「狂の如く」という表現は桃核承気湯を象徴する言葉として知られ、情緒不安定を伴う体質に用いられてきたとする古典的な記載があります。なお、著しい情緒不安定や精神的な症状が続く場合は、漢方薬による対応を検討する前に、まず医療機関を受診することが優先されます。
大黄牡丹皮湯――右下腹部の圧痛と化膿性の病変に
大黄牡丹皮湯は、桃核承気湯と同様に便秘への対応を含みつつ、より炎症・化膿性の病態を想定した処方として位置づけられています。
構成生薬と病名治療での応用
構成生薬は冬瓜子(とうがし)、桃仁、牡丹皮、大黄、芒硝です。冬瓜子は水の巡りに、桃仁と牡丹皮は瘀血に、大黄と芒硝は便秘に対応するとされ、全体の構成は桃核承気湯と似ていますが、気逆を鎮める桂皮が含まれていない点が異なります。そのためホットフラッシュのような強いのぼせを伴わないタイプに向くとされ、桃核承気湯で見られやすい精神的な不安定さも典型的には目立たないとされています。
なお、虫垂炎や憩室炎は、状態によっては緊急の外科的処置を要することもある疾患です。こうした症状が疑われる場合は、自己判断でこの処方に頼らず、症状に気づいた時点で直ちに医療機関を受診することが大前提となります。歴史的には、感染や炎症によって膿がたまっていく病態を漢方的には瘀血の一種としてとらえ、医師の管理下での補助的な位置づけとして紹介されてきた経緯がありますが、これはあくまで古典・伝統理論における位置づけの紹介であり、現代における虫垂炎・憩室炎の標準治療(外科的処置等)に代わるものでは一切ありません。
「小腹腫痞」という腹証
大黄牡丹皮湯が向くとされるタイプの腹診所見は「小腹腫痞(しょうふくしゅひ)」と呼ばれ、右下腹部に圧痛を触れることが特徴とされます。この位置は虫垂炎の際に痛みが出やすい部位とも重なり、両者の関連が指摘される一因になっています。前述の通り、瘀血の圧痛点は処方によって現れる位置が異なるとされ、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯のそれぞれで腹診の所見を比較することが、漢方薬選びの実際的な手がかりの一つになっています。
加味逍遙散――症状がコロコロ変わる人に用いられる処方
婦人科3大処方の3つ目である加味逍遙散は、瘀血だけでなく、気血水の様々な異常にまたがる幅広い構成を持つ処方です。
構成生薬を気血水で分解すると
構成生薬は柴胡、芍薬、朮(じゅつ)、当帰、茯苓、山梔子(さんしし)、牡丹皮、甘草、生姜、薄荷(はっか)の10種類と、他の処方に比べて数が多くなっています。これをこれまでの処方と照らし合わせて分解すると、次のように整理できます。
- 芍薬・朮・茯苓・当帰:当帰芍薬散に通じる、血虚と水毒への対応
- 柴胡・朮・茯苓・甘草・生姜:四君子湯や補中益気湯に通じる、気虚への対応
- 山梔子:気の鬱滞(気鬱)への対応
- 芍薬・茯苓・牡丹皮:桂枝茯苓丸に通じる、瘀血への対応
このように、加味逍遙散は血虚・水毒・気虚・気鬱・瘀血という複数の異常にまたがって構成されており、単一の症状をピンポイントで狙う処方というより、体質全体を整える方向性を持つ処方といえます。なお、山梔子を含む漢方薬(加味逍遙散を含む)を長期間にわたって使用した場合、多くは5年以上の長期投与の症例で、まれに「腸間膜静脈硬化症」という消化器系の副作用が報告されています。腹痛・下痢・便秘・腹部膨満感といった消化器症状が繰り返し現れたり、便潜血が陽性になったりする場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに処方元の医師や薬剤師に相談してください。
『和剤局方』にみる幅広い適応
加味逍遙散のもとになった逍遙散(加味逍遙散から山梔子と牡丹皮を除いたもの)は、宋代の医書『和剤局方』に記載があります。原文には「血虚労倦、五心煩熱、肢体疼痛、頭目昏重、心忪頬赤、口燥咽乾、発熱盗汗、減食嗜臥、及び血熱あい打ち、経水調わず、臍腹脹痛、寒熱瘧(ぎゃく)の如くなるを治す」とあり、貧血気味で疲れやすい、手のひらや足の裏がほてる、体がだるく痛む、頭が重い、動悸や顔のほてりがある、口や喉が渇く、寝汗をかく、食欲がなく横になりがち、月経が不規則で下腹部が張って痛む、悪寒と発熱を繰り返す――といった、実に多彩な症状が列挙されています。これは、問診のたびに訴える症状が次々と変わっていくような、いわゆる不定愁訴タイプの方に用いられやすいことを示しているとされます。ちなみに「逍遙」とは「気ままにあちこちを歩き回る」という意味の言葉で、症状が一箇所に定まらない様子とも重なる名付けだと言われています。
4処方の使い分け早見表
下記の表内の記載は、紙面の都合上「〜とされる」「〜ことがある」といった表現を簡略化しています。一般的な傾向を簡略化して整理したものであり、効能・効果を保証するものではありません。詳細は各製品の添付文書をご確認ください。
| 処方名 | 体力の目安 | 便秘の有無 | 精神症状 | 圧痛点の位置 | 主な用いられ方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 桂枝茯苓丸 | 中程度〜しっかり | なくてもよい | 目立たない | 下腹部(左右問わず) | 月経不順、更年期ののぼせなど |
| 桃核承気湯 | しっかり(実証) | あり | 不安・興奮を伴うことも | 左下腹部(小腹急結) | 便秘傾向のあるのぼせ、情緒不安定 |
| 大黄牡丹皮湯 | しっかり(実証) | あり | 目立たない | 右下腹部(小腹腫痞) | 便秘傾向、下腹部の熱感・圧痛を伴う体質 |
| 加味逍遙散 | やや虚弱〜中程度 | 問わない | 症状が変わりやすい | 特定しにくい | 不定愁訴、更年期の多彩な症状 |
体力があり便秘が強い場合は桃核承気湯か大黄牡丹皮湯、その中でものぼせや精神的な不安定さが目立つ場合は桃核承気湯、右下腹部の圧痛を伴う体質を想定する場合は大黄牡丹皮湯、婦人科疾患を中心に幅広く使いたい場合は桂枝茯苓丸、症状が多岐にわたり定まらない場合は加味逍遙散、というように大まかな見取り図を描くことができます。ただし、実際の選択には体質や随伴症状の詳細な問診・腹診が欠かせないため、自己判断だけで処方を決めず、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することが望ましいとされています。
瘀血を悪化させないための生活習慣・食養生
漢方薬による対応と並行して、日常生活の工夫が瘀血の体質改善に役立つと考えられています。
体を冷やさない工夫
冷えは血流を悪化させる代表的な要因とされ、特に下半身や下腹部を冷やさないことが意識されてきました。入浴はシャワーで済ませず湯船に浸かる、締め付けの強い衣類を避ける、冷たい飲み物を控えるといった工夫が挙げられます。
血行を促す食材と控えたい習慣
食養生の観点では、青魚に含まれるEPA・DHA、玉ねぎや生姜、黒酢、納豆などが血の巡りを助ける食材として紹介されることが多くあります。一方で、脂っこい食事や糖分の摂りすぎ、長時間同じ姿勢を続けることは血流を滞らせやすいとされ、適度なウォーキングやストレッチで筋肉のポンプ作用を働かせることも勧められています。喫煙も血管の収縮を招くとされ、瘀血傾向がある方には特に注意が呼びかけられています。
よくある質問
Q. 瘀血は病院の検査で分かりますか?
A. 瘀血は漢方独自の体質分類であり、血液検査などの西洋医学的な検査で直接判定されるものではありません。舌診や腹診など、漢方的な診察を通じて推定されるものとされています。ただし、生理痛の悪化やしこりの増大など気になる症状がある場合は、漢方に頼る前にまず医療機関で原因疾患の有無を確認することが優先されます。
Q. 桂枝茯苓丸と桃核承気湯はどちらも市販で買えますが、何が違いますか?
A. 大きな違いは便秘の有無と体力の目安です。便秘がなく、のぼせや肩こりが中心であれば桂枝茯苓丸、便秘が強くのぼせや精神的な不安定さも伴う場合は桃核承気湯が候補になるとされています。当院では漢方薬の販売・処方は行っておらず、迷う場合は薬剤師に相談することが勧められます。
Q. 加味逍遙散はどんな人に向いていますか?
A. 体力がやや低めで、月経前後に症状が変わりやすい、イライラやほてり、不眠など複数の不調が入れ替わり立ち替わり現れるタイプの方に用いられやすいとされています。単一の症状だけを狙うというより、体質全体の底上げを目的に使われる傾向があります。
Q. 桃仁と牡丹皮は食品としても摂れますか?
A. 桃仁やボタンの根皮は生薬として加工・用量が管理された形で処方されるものであり、市販の食品としてそのまま日常的に摂取する用途は想定されていません。漢方薬としての使用は、医師や薬剤師の指導のもとで検討することが基本です。
Q. 瘀血の漢方薬は妊娠中でも使えますか?
A. 桃仁や牡丹皮、大黄などを含む処方は、妊娠中の使用について注意が必要とされるものが含まれます。妊娠中・授乳中の場合は自己判断で服用せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
あらためて、当院は鍼灸院であり、本記事で紹介した桂枝茯苓丸をはじめとする漢方薬の調剤・処方・販売は行っておりません。瘀血・気血水は東洋医学の伝統理論として鍼灸の背景知識にも通じるため、体系的な理解の一助として紹介しています。
瘀血は「血の巡りが滞った状態」を指す漢方の概念で、痛み・しこり・黒ずみといった特徴的なサインを通じて推測されます。その中心にあるのが桃仁と牡丹皮という2つの生薬で、これに気逆を鎮める桂皮、便通を整える大黄・芒硝、体質全体を底上げする柴胡や当帰などが組み合わさることで、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、加味逍遙散という個性の異なる4処方が成り立っています。
便秘の有無、のぼせや精神症状の強さ、腹診での圧痛点の位置といった手がかりを踏まえながら、自分の体質に近い処方の傾向を知っておくことは、漢方薬を選ぶ際の第一歩になります。ただし、本記事で紹介した内容はあくまで漢方的な考え方や古典・基礎研究レベルの知見に基づく整理であり、効果を保証するものではありません。最終的な処方選択や長期的な服用については、体質や既往歴を踏まえた上で、漢方に詳しい医師・薬剤師に相談することをおすすめします。気血水の基礎理論は当院の漢方薬とは?証・気血水・選び方でもまとめています。
【本コラムの監修】
国家資格登録番号
はり師 第13878号
きゅう師 第24519号
・当院について
鍼灸治療では、頭の鍼と経絡治療を用いた本格的な鍼灸施術を行います。身体が本来持っている回復力を高め、バランスが崩れた身体が元に戻るためのお手伝いをします。局所の施術だけでなく、触診や視診を重視する伝統的な診察方法で全身の状態を観察し、身体と対話をしながら、日本人の体質に合わせた鍼灸治療を心掛けております。

